IPO投資はいたってシンプル。初値が公募価格を上回れば良いからです。
抽選というハードルはあるものの、当選さえすれば、公募価格で買って初値で売るだけです。
それだけで利益が得られる可能性があるため、IPO投資は初心者からベテラン投資家まで幅広く人気があります。
そんなIPO投資ですが、投資のポイントとなるのが「初値で売り抜ける」こと。
初値で売り抜ける…つまり、初値売りがIPO投資では非常に重要です。
ですが、運良くIPOに当選し初値売りにチャレンジしたものの、
「儲からなかった。聞いていた話と全然違う!」
と残念な結果になってしまう人も中にはいます。
筆者は普段、ファンド業務に携わり数億円のトレードを行っています。
IPOで失敗してしまう原因は
- 初値が公募価格が上回らない
- 売り抜けられなかった
の2つです。
これらのを事前に対策するためのポイントを具体的に解説していきます。
より確実にIPOの初値売りで儲けたい方は必ずチェックしてください。
筆者がこれまで得てきたノウハウを余すことなく紹介しています。
Contents
IPOの初値売りは儲かる?
IPOといえば公募価格で買い、初値の値上がりを狙う投資法が最もメジャーです。
初値が公募価格を上回るケースが多いことから、儲かりやすいと言われています。
初値売りは儲かる確率が高いのは確かです。
年によって違いはありますが、およそ7割~8割くらいの確率で初値が公募価格を上回っています。(ちなみに2018年は84%でした。)
そのため、初値売りをすれば儲かる可能性が高いのは間違いないと言えるでしょう。
ただ、初値売りをすれば必ず儲かるのかというと、決してそうではありません。
そこで次に、初値売りに失敗したケースについて考えてみたいと思います。
初値売りの失敗はどれくらい?対策法は?
IPOといえば、初値で売り抜けて利益を得るのが定石です。
しかし、これに失敗するケースもあります。
「どうして失敗するのか」という前に、少し考えたいことがあります。
それは、「初値売りの失敗とは何か」ということです。
そもそも初値売りの「失敗」とは何をもって失敗とするのでしょうか?
このことについては2つのパターンが考えられます。
それは、
- 初値が公募価格を下回ってしまい損失が出たから失敗
- 初値で売り抜けられずに失敗
です。
それでは、それぞれについて考えてみましょう。
「初値が公募価格を下回ってしまい損失が出たから失敗した」というケース
初値が読み通りに上がらず、むしろ公募価格を下回った結果、損失を被るケースです。
IPOの初値売りは勝率が高いということで人気があります。
2018年に関して言えば、IPOで初値が公募価格を上回った件数は、95件中80件です。
確率でいうと初値で売った場合、約84%の割合で利益を得られることになります。
ですが、裏を返せば15件は公募価格を下回るか公募価格と同じ価格の初値になったということです。
割合でいえば、16%ほどが公募価格割れか公募価格と同じ価格になったということになります。
正直なところ、初値が公募価格を上回るかどうかを正確に予想することは不可能です。
ですが、ある程度見通すことはできます。
そのためには、IPOに申し込む前に下記の点をチェックしましょう。
- 公募株が売出株よりも多いかどうか。
- 市場の規模に吸収金額が合っているかどうか。
- 再上場の銘柄ではないか。
- 業績は増収増益基調か。
- 旬のテーマに沿った事業内容や人気の事業内容か。
- 公募価格が仮条件の上限価格を下回っていないか。
- 大株主にベンチャーキャピタルがいるかどうか。
これら7つの点を全てクリアしている銘柄は、公募価格が初値を上回る可能性が高いと言えます。
それでは、それぞれについて説明します。
パターン1:公募株が売出株よりも多いかどうか。
公募価格が売出株より少ないと、初値が公募価格割れする可能性が高くなります。
なぜなら、売出株は既存の株主が保有する株を利益獲得のために市場に放出するものだからです。
一方、公募株は上場する会社が事業拡大などの資金を調達するために市場に放出するものです。
つまり、公募株は会社の今後の成長につながるものであると言えます。
そのため、公募株が売出株より多い方が市場ではプラス評価になるのです。
パターン2:市場の規模に吸収金額が合っているかどうか。
吸収金額が市場の規模を上回ると公募価格割れする可能性があります。
なお、目安については下記のとおりです。
- 東証一部上場の場合…250億円前後
- 東証二部上場の場合…10億円前後
- 東証マザーズの場合…30億円前後
- ジャスダックの場合…20億円前後
なお、吸収金額は
(新規発行株数+既存株主による売出株数)×公募価格
で算出することができます。
上場する市場と吸収価格とを比較し、上記の額に収まっているかどうかを確認しましょう。
パターン3:再上場の銘柄ではないか。
再上場する会社の場合、投資家の評価が通常の新規上場よりも厳しくなります。
再上場できるまでに業績が回復したからといって、そのことを投資家は評価しません。
再上場の会社が市場で評価されるにはかなりの好材料がないと厳しいのです。
このような事情から、再上場の会社の場合、公募価格割れしやすくなります。
パターン4:業績は増収増益基調か。
増収増益が続いている会社の方が市場の評価が高くなります。
ただ、増収増益の割合が小さいものに関しては、市場はあまり評価しません。
そのため、増収率と増益率については前期比2桁台が続いているものを選ぶことが大切です。
さらに、今期の業績見通しについても、増収増益率が2桁台(10%以上)の予想がされているものを選びましょう。
パターン5:旬のテーマに沿った事業内容や人気の事業内容か。
IPO銘柄には、事業内容によって人気になりやすいものとそうでないものとがあります。
人気になりやすいものの代表が、今であればAIやキャッシュレス決済です。
近い将来広がるであろう新技術、その中でもマスコミなどでよく取り上げられているものは人気があります。
また、IT系の会社は全般的に人気化しやすい傾向にあります。
さらに、飲食関係で株主優待を実施している会社や競合のいない独自技術を持つ会社も根強い人気があります。
反対に、不動産や食品、卸売りなどはあまり注目されず、公募価格割れしやすい傾向にあります。
パターン6:公募価格が仮条件の上限価格を下回っていないか。
IPOでは承認後、公募価格決定のために1,200円~1,600円というような値幅を決めます。
この値幅のある価格のことを仮条件といいます。
ちなみに、仮条件の上限とは、先ほどの例でいえば1,600円がそうなります。
この仮条件の範囲の中で、個人投資家が「いくらで何株買いたいか」について証券会社を通じて申告するのです。
これをブックビルディング(需要予測)といいます。
イメージとしては、公募価格を決める上でのアンケートのような感じでしょうか。
このブックビルディングを基に正式な公募価格を決定します。
公募価格が仮条件の上限を下回ったということは、買いたい人が少なかったということになります。
つまり、「人気がない」ということになり、初値が公募価格割れする可能性が高くなります。
パターン7:大株主にベンチャーキャピタルがいるかどうか。
大株主にベンチャーキャピタルがいる銘柄を投資家は避ける傾向にあります。
なぜなら、ベンチャーキャピタルが上場時に保有株を売却する可能性があるからです。
ベンチャーキャピタルは未上場の会社の株を買い、事業の拡大を支援しながら上場までをサポートします。
もちろん、ボランティアでこのようなサポートをしているわけではありません。
未上場時に買ったその会社の株(未公開株)を上場時に売却して利益を得るのが一番の目的です。
このような理由から、ベンチャーキャピタルが大株主にいる場合、上場時に株を売却する可能性が高いのです。
もしもベンチャーキャピタルが株を売却すれば、上場後に株価は下がりやすくなります。
そうなることを投資家は嫌がり、IPOになかなか申し込みません。
その結果不人気になってしまい、上場しても、初値が公募価格割れしてしまうのです。
ここまで、「初値が公募価格を下回ってしまい損失が出たから失敗した」ケースについて説明しました。
次に、「初値で売り抜けられずに失敗した」ケースについて見てみましょう。
「初値で売り抜けられずに失敗した」ケース
このケースについては、
- 成行注文を使わなかった。
- 売り注文を入れるタイミングを誤った。
の2つのパターンが考えられます。
それぞれについて説明します。
パターン1:成行注文を使わなかった。
IPOの初値売りは、成行注文を使うことが基本となります。
なぜなら、初値がいくらになるか分からないからです。
指値注文を使うと、初値が指定した金額より低い場合に約定せず注文が残ってしまいます。
というのも、指値注文は投資家にとって有利方向に働く注文だからです。
つまり、指定した価格以上で売る、指定した価格以下で買うのが指値注文ということになります。
そのため、相場が指値注文を出した投資家にとって有利方向に動かなければ約定しません。
その銘柄の普段の動きが判れば、「これくらいの変動の幅に入るだろう」と予測することもできます。
ですが、IPOは初めて上場する銘柄が取引対象なので、このような予想を立てることは困難です。
このことから、指値注文はIPOの初値売りには不向きであると言えるのです。
一方、成行注文は、約定を優先した注文になります。
つまり「どんな価格でも売ります・買います」という注文方法です。
そのため、いくらになるか分からないIPOの初値で売るのに向いた注文方法であると言えます。
パターン2:売り注文を入れるタイミングを誤った。
IPOの初値売りを行うには、上場当日の午前9時より前に注文を入れておかなければなりません。
なぜなら、株式市場のスタート時間は午前9時だからです。
この時間を過ぎてしまうと、すでに初値が決まった場合、初値売りはできなくなります。
もしかしたら、相場の状況次第では、どこかのタイミングで初値と同じ株価になるかもしれません。
ですが、そうなる保証はどこにもないのです。
そのため、初値売りをしたいのであれば、必ず上場当日の午前9時より前に注文を入れましょう。
なお、「初値売りの注文を入れ忘れた!」という場合でも、初値売りに間に合うこともあります。
それは、初値がなかなかつかないケースです。
人気が集中しすぎた銘柄の場合、初値がすぐにつかないことがあります。
中には、上場当日には初値がつかず、翌日や翌々日など数日経ってから初値がつくこともあります。
この場合は、市場が開いた後に注文を入れても初値売りが可能です。
とはいえ、初値がつくまでに時間がかかるかどうかは、その時になってみないとわかりません。
そのため、初値売りをしたいのであれば、市場が開く前までに必ず注文を入れておくようにしましょう。
ここまで初値で売り抜けられずに失敗したケースについて説明しました。
それでは次に、IPOの初値売りはどのように行うか、ということを解説します。
IPO初値売りのやり方はかんたん!注文する時間は証券会社によって異なる
IPOの初値売りは至って簡単です。
すでに書いたとおり、株式市場がスタートする午前9時までに成行注文を入れておくだけです。
とはいえ、「9時ギリギリに注文を入れるのは怖いから、前もって入れておきたい」という人もいるでしょう。
その場合、いつから注文が可能なのでしょうか。
そこで、ここからはいつから初値売りの注文ができるのか、ということについて解説します。
初値売りの時間は証券会社によって違う
初値売りの注文が出せる時間は、証券会社によって異なります。
下記は、初値売りの注文が出せる時間について、主な証券会社ごとにまとめた表です。
上場日の前営業日から売り注文が出せる会社と、上場日当日に出せる会社があることが判ります。
上場日当日に売り注文を出せる会社の場合、遅くとも朝6時には注文を出せます。
そのため、余裕を持って発注できるようになっていると言えるのではないでしょうか。
証券会社 | 売り注文を出せる日時 |
---|---|
SBI証券(※注1、※注2) | 上場日の前営業日翌日4時から |
楽天証券 | 上場日の前営業日17時から |
GMOクリック証券 | 上場日の前営業日17時から |
カブドットコム証券 | 上場日の前営業日18時から |
松井証券 | 上場日の前営業日17時から |
マネックス証券 | 上場日の前営業日17時から |
ライブスター証券 | 上場日の前営業日16時から(※注3) |
岡三オンライン証券 | 上場日の6時から |
エイチ・エス証券 | 上場日の6時から |
三菱UFJモルガン・スタンレー証券 | 上場日の6時から |
東海東京証券 | 上場日の6時から |
SMBC日興証券(※注1) | 上場日の5時から |
大和証券 | 上場日の6時から |
野村證券(※1) | 上場日の6時から |
※注1:上場日と前営業日の間に休日を挟む場合、前営業日の翌日に該当する休日に注文が可能。
※注2:2つ以上の証券取引所に重複上場する銘柄は、午前8時より注文可能。
※注3:取引ツールによっては、上場日の前営業日19時から注文可能。
このように、初値売りの注文はいずれの証券会社も余裕を持ってできるようになっています。
次に、初値売りはどのような手順で行うのかということを見ていきましょう。
IPO初値売りのやり方(SBI証券の手順)
IPO投資で利益を得るために行う初値売りは、どのような手順で行うのでしょうか。
ここからは、SBI証券の取引画面を例に、初値売りの手順を解説していきます。
STEP1:SBI証券のHPより証券口座を開き、「口座管理」をクリック。
STEP2:SBI証券のHPより証券口座を開き、「口座管理」をクリック。
STEP3:株式(現物/一般預り)の中の「現売」をクリックする。
STEP4:注文入力画面に遷移するので、「通常/逆指値」タブの中の「株数」に売却する株数を入力。その下の「価格」では「成行」にチェックを入れる。「取引パスワード」を入力したら、「注文確認画面へ」ボタンをクリックする。
STEP5:注文確認画面が表示されるので、内容を確認した上で、「注文発注」ボタンをクリックする。
このように初値売りの注文を入れてきます。
忘れてはいけないのは、「成行注文を入れる」ということです。
初値売りの注文を入れる際は、成行注文を入れることを必ず覚えておきましょう。
【Q&A】注文の成立(約定)は注文順?注文時間は早いほうがいいの?
結論からいうと、IPOの場合は注文した順から注文を成立させていきます。
つまり、早く注文した人から順に約定することになります。
どうしてそうなるのか、ということを説明するにあたり、まずは株の約定のルールについて説明します。
株は売買のルールが設けられています。
そのルールは3つの原則から成り立っています。
その原則とは、
- 成行注文優先の原則
- 価格優先の原則
- 時間優先の原則
の3つです。
参考:価格優先の原則│初めてでもわかりやすい用語集|SMBC日興証券
株の取引では、成行注文をまずは優先します。
その次に指値注文の中で、買い注文の場合は高い値段から、売り注文の場合は低い値段から優先します。
そして、同一価格の注文については、先に出した注文から優先していきます。
そのため、成行注文を出した人からまずは約定していくことになります。
そして次に、指値注文の中で価格優先の原則に基づいて約定させていきます。
その中で同じ価格の指値注文があれば、時間優先の原則に基づいて約定させていくのです。
IPOの初値売りの場合、ほとんどの人が成行注文で売ることになります。
すると、その場合は時間が優先されるため、早く注文を入れた人から先に約定していくことになります。
【Q&A】初値がすぐつかないときの対処法
IPOで人気が集中した銘柄は、初値がすぐにつかないことがあります。
だからといって特に問題はありません。
あらかじめ売りの成行注文を入れてあるのなら、とにかく初値がつくまで待つだけです。
問題は、上場日当日に初値がつかなかったケースです。
この場合、放っておくと翌日に成行注文は発注されません。
なぜなら、成行注文は上場日当日中が有効期限になっているからです。
そのため、上場日に初値がつかなければ、翌日の午前9時までに改めて成行注文を入れておく必要があります。
先ほど書いたとおり、成行注文は時間優先で約定しますので、できるだけ早く注文を入れておきましょう。
【Q&A】初値がつかなかった2日目はどうすればいい?
先ほど書いたとおり、上場日に初値がつかなかった場合は、成行注文を再び入れておく必要があります。
上場翌日の午前9時までに注文を入れる必要がありますが、それよりも早く注文を出しておきましょう。
あとは2日目中に初値がつき、無事約定するのを待つばかりです。
もしも2日目も初値がつかないようなら、また成行注文を入れ直す必要があります。
このようにして、初値がつくまでひたすら成行注文を入れ直す…ということを繰り返します。
まとめ
初値売りで儲かる確率が高いのは確かです。
ですが、絶対ではありません。
儲けるためには、まずは初値が公募価格を上回る銘柄を選ぶ必要があります。
そして、初値で売り抜けられるよう、あらかじめ成行注文を入れておかなければなりません。
この2つをきちんと実行すれば、初値売りは成功する確率が高くなります。
成功確率を上げるためにも、銘柄選びのポイントや初値売りの注文方法と注意点をきちんと押さえましょう。